ダイヤ通商について
本社を巣鴨に構えるダイヤ通商は、東京23区・神奈川県、埼玉県にてガソリンスタンド運営をベースとした石油事業や、自社ビルを活用した不動産事業の他、サイクルショップ専門店の運営を生業としている。
売上は減少傾向である他、営業利益率も長年にわたって1%台を推移している。
19年3月期にはSSヨンク大塚の土地を売却したため、一時的に利益が出た形となったが、それ以外の年度では低空飛行が続いている。
そんなダイヤ通商の重要な収益源となっているのが不動産事業である。売上高構成比ではわずか5%前後であるが、営業利益の大半を稼いでいるのである。
同社の保有する土地・建物については下記の通り。
有価証券報告書によると、賃貸不動産は巣鴨ダイヤビル、川口ダイヤピアの他にもう1か所が有るようだ。
・巣鴨ダイヤビル(77年10月竣工)
東京都豊島区巣鴨1丁目11−1
・川口ダイヤピア(82年4月竣工)
埼玉県川口市栄町3-4-14
直近の動向に関して
・直近の値動き
今年4月以降は基本的に上昇基調である。7月以降、某投資顧問による書き込みがなされた事以外で目立つ事は無かったが、12月に入り2件の大量保有報告がなされた。これら2件について詳細を確認する。
1件目:12/10 小澤氏他4名の連名による買付 (16日報告)
小澤 常浩 | 166,600 | 20.26 |
田賀 健太郎 | 18,000 | 2.19 |
田中 理 | 3,000 | 0.36 |
尹 妙子 | 2,900 | 0.35 |
尹 友莉佳 | 700 | 0.09 |
合計 | 191,200 | 23.25 |
中でも尹氏2名は2020年3月、北日本紡績に対して株主提案(取締役の解任及び新取締役の選任)を行っている。
保有目的は下記の通り。
”当該株式は、KMOキャピタル有限責任事業組合が経営権の取得及び維持のために保有しており、組合員である小澤常浩が個人として報告しております。”
12月10日の前場の寄付きにおいて168,700株の取引が成立した。1点気がかりなのは、これほどの株数を誰が売ったのかである。
2件目:12/21 合同会社FINOによる買付 (23日報告)
21日に市場内にて157,000株 (19.10%) を平均単価2780円で取得、保有目的は純投資。また、事務上の連絡先に株式会社GCMとある。ちなみにFINOとGCMは以前、アクロディアの新株予約権一部譲渡の際に FINO1号投資事業有限責任組合を共同出資にて設立している事が確認されている。
1件目と同様に、売り主が気がかりである。
臨時株主総会の招集請求に関するお知らせに下記の通り
「好立地の不動産を保有しており、証券化スキームを用いた流動化等の有効利用等を図ることで、より一層の飛躍の可能性を有しております。」と記載されている通り、役員交代請求側は同社の保有する不動産が狙いであると考えられる。
現時点での保有者
2021年1月4日現在で確認できる保有者を下記にまとめた。大量保有報告書によると、
保有者 | 保有株数 | 保有比率 |
森猛 | 131,132 | 15.95 |
宮脇昌三 | 42,000 | 5.11 |
FINO | 157,000 | 19.11 |
小澤氏他4名 | 191,200 | 23.25 |
森氏はダイヤ通商の創業家で前社長であるため臨時株主総会の議案には反対するものと考えられる。
宮脇氏は2020年3月、北日本紡績の株主として尹氏らと共に臨時株主総会を請求し、役員の交代を成功させた。今回も同じ戦法で来るだろう。
FINO,小澤氏他4名についても役員の交代に議決権を行使するものと考えられる。
その様に仮定すると、役員交代請求側の持ち分は現時点で47.47%となり、過半数を取得する目前となっている。その為、残りの株は市場内で十分に買い集める事ができるので、プラコーの際に起きたような委任状争奪戦に発展するケースは想定し辛い。
2020/12/22 臨時株主総会の招集請求
12月22日、尹氏2名他、田賀氏及び田中氏により臨時株主総会の招集請求臨時株主総会の招集請求がなされた。請求内容は、現取締役5名(北野氏、甲斐氏、菊池氏、小林氏、辻角氏)の解任及び、取締役候補者3名(小澤氏、泉田氏、井澤氏)、監査役1名(川島氏)の選任。
提案の理由は、大まかには好立地の不動産を活用しきれていない事、サービスステーション事業(ガソリンスタンド)では差別化を図ることで利益の拡大が見込まれる事、サイクルショップ運営事業では、近年の健康志向の高まりやコロナ対策による自転車通勤の推奨により自転車需要の拡大が見込まれるが、低い利益水準で現状維持を行うのみであり、長期的にはダイヤ社の衰退を招くことになるため役員の交代を請求した。
また、プラコーの件でフクジュコーポレーションの復代理人を務めたOMM法律事務所 大塚和成 弁護士が田賀氏らの代理人を務める。
2020/12/30 株主提案に対する反対意見
12月30日、ダイヤ通商より株主提案に対する反対意見が公表された。
・現経営体制による業績の向上と財務体質の改善
・現状で監査機能を充分に発揮している事
・本株主提案が承認されることにより不利益を被る可能性
上記の理由をもとに株主提案に反対意見を表明した。