今回は、日邦産業を取り巻く現在の状況と今後の戦略についてまとめてみた
おさらい
日邦産業は現在 ≪フリージア・マクロス 東2 6343≫ により、株式を買い集められている。フリージアは昨年、突如として日邦産業株を市場で買い集め19.75%を保有し、筆頭株主となった。急激な買い占めを恐れた日邦産業は、一度は廃止した買収防衛策を再度導入し、適切なプロセスを経ずに20%以上保有した場合は、フリージア以外の株主に新株予約権を発行し、希薄化を行うと圧力をかけられた為、フリージアは20%以上保有することが出来なくなった(ポイズンピル)。この買収防衛策が導入された時期は、フリージアが急激に買い進めた時期と重なっており、初めに取締役会によって決議され、後日行われた株主総会で承認されたのだが、ここに少々問題があった。フリージアは買収防衛策を廃止する委任状を株主に送付する目的で、株主の権利である株主名簿の閲覧を日邦側に請求した。しかし、日邦は株主総会の1週間ほど前まで閲覧を許さなかった。これにより、フリージアからの委任状が株主のもとへ届いたのは株主総会の寸前となり、既に議決権を行使してしまった株主も多かったようだ。その結果、株主総会での買収防衛策継続の議案は、賛成票66.6% 反対票33.4%で可決されてしまった。
今年の状況は?
昨年の株主総会の時点では、フリージア持ち分が9.45%で 反対票は33.4%だった。一方今年はフリージア持ち分が19.75%と、昨年に比べ10%増加しているため、少なく見積っても45%は反対票が集まりそうだ。それに加え、今年はフリージアからの委任状も早期に届いており、株主構成も大きく変わっていると考えられる(昨年からの経緯を知っている投資家が増えている)ため、今年こそは買収防衛策が否決される可能性が高いと見ている。防衛策を導入した日邦には、当然フリージアを含む株主からの圧力がかかっている為、決算で結果を残さなければならない状況となっている事もあり、実際に出てきた数字は良かった。その為、直近の株価も底堅いものとなっている。もしこの状況で買収防衛策が廃止されれば、フリージアは日邦に役員を送るために、少なくとも発行済み株式の1/3(≒3,000,000株)以上は買い付けると思われる。現在フリージアは、1,796,700保有しているので、100万株以上は買い付けされると思われる。この通りとなった場合、フリージアが既に保有している19.75%、フィディリティの8%、自社持株会の7%、三井住友の3%、三菱UFJの2.4%とその他個人大株主の約12%を足した52.24%に加え、フリージアが今後買い増す事により、市場に出回る株は大幅に減る為、株価は益々上昇しやすくなると考えられる。
佐々木ベジ氏からの意見書について
先日、日邦産業株主のもとへ、佐々木ベジ氏からの意見書(買収防衛策廃止に関する意見書)が届いた。A4サイズ7枚にわたり、昨年からの、日邦産業とフリージアを取り巻く状況、日邦産業立て直しの計画、買収防衛策を廃止させるための具体的な手段等について詳細に書かれている。ここで気になるのは「1/3を超え39%から45%ぐらいまで株式を取得しなければ、この会社を良くすることはできないと考えております。」という一文である。要するに買収防衛策さえ廃止されれば、フリージアは40%以上を取得する意思はあるという事である。
2020/10/16 株主総会決議取消訴訟の提起
2020年10月16日の引け後、日邦産業より訴状受領に関するお知らせが公表された。
訴訟の内容は以下の2点
・買収防衛策継続決議の取り消し
・訴訟費用を日邦産業の負担とする旨の請求
訴訟の理由は下記の通り。
フリージアが提出した議決権行使書面が、提出期限までに日邦産業に提出された議決権行使書面に含まれていないことを理由に、日邦が会社提案に反対する議決権行使書面の一部を恣意的に除外し、一部株主の書面による議決権行使を認めなかったから。
(この点について、日邦産業は否定している。)
訴訟の結果次第では、買収防衛策の廃止の可能性も有りうるので今後の動向を注意深く見守りたい。
2021/01/27 フリージアによるTOB
1月27日引け後、日邦産業に対するTOBがフリージア・マクロスから提出された。
買付者 :フリージア・マクロス株式会社
買付価格:普通株式1株につき930 円
買付期間:2021年1月28日(木)から2021年3月12日(金)まで(30営業日)
買付予定株式数:買付予定数 714,800株 下限:25,000株 上限:714,800株
上限で買い付けられた場合のフリージア保有比率は27.57% 2,511,500 株
下限で買い付けられた場合のフリージア保有比率は20.00% 1,821,700 株
目的:①フリージアグループとしての業績向上のための日邦産業の持分法適用会社化
②日邦産業との資本業務提携の交渉に際しての交渉力の向上
下限の設定理由:
持分法適用会社化し、資本業務提携の実現を企図していることから少なくとも 20.00%以上必要、
かつ、本TOBをもって、本買収防衛策の審議を促し、フリージアを濫用的な買収者ではなく、友好的な買収者である旨を、日邦産業の取締役会で決定するよう要請を行いたいため。
上限の設定理由:
日邦産業が今後株主総会における何らかの特別決議の決議をもって、フリージアに不利益を生じさせる可能性も踏まえ、少なくとも株主総会の特別決議を単独で阻止できることが望ましく、また当該決議事項の決議に必要と考えられる議決権数を超える対象者株式の取得は必要ないと判断し、直近2年度の定時株主総会における議決権行使比率の平均値である 82.72%の1/3 =7,534,307 株 * 0.333 = 2,511,500株となるように上限が設定された。
買付価格の根拠:資本業務提携による公開買付者とのシナジー効果(販路の拡大、仕入れコストの低下)によって業績改善を実現した場合、対象者の株価は、PBR1倍になることが期待されるため、買付価格はPBR1倍となる水準が設定された。
ベジ氏の狙い
ここから先は筆者の推測である。
・ベジ氏の本当の狙いは一体何だろうか。
・なぜ、自身と全く関係の無い会社の事に多額の資金を投じ、立て直しを図ろうとしているのか?
・なぜ役員を送り込むことのできる1/3以上の株式の取得を目標としているのか?
※2020年に書きました
私の考えるシナリオ:
フリージアグループが日邦産業を買収するのは当然利益を上げるで為ある。日邦産業は長年PBR1を割っていた為、安値で放置されているうちに株式を買い占め、役員を送りこみ、会社の立て直しを行うことにより、時価総額を上げ、最終的にはMBOにより全株を日邦産業に買い取らせる戦略ではないだろうか。ベジ氏は秋葉原での電子部品販売で財産を築かれた方なので、日邦産業の分野にも造詣が深いと思われる。その上、ベジ氏の背後には潤沢な資金を持つ台湾筋が付いているとされている。それ故、日邦産業の立て直しプランについては、既にベジ氏は当然に考えており、豊富な資金と知識により実現可能であると自信があるはずである。もしこのシナリオが上手くいけば、フリージアは莫大な利益を上げることが出来、その他株主も株価上昇の恩恵を受けることが出来、日邦産業も上場廃止により、経営に口を出される事もなくなり、三方良しの状況となる。