【3751】日本アジアグループMBO

個別株式

日本アジアグループMBOの概要

買付者 :株式会社 グリーン ホールディングス エルピー
(カーライル系投資ファンド運営)

買付価格:普通株式1株につき600 円

買付期間:2020 年 11 月 6 日(金曜日)から 2020 年 12 月 21 日(月曜日)まで(31 営業日)

買付予定株式数:買付予定数 27,454,480株
下限:18,303,000株(所有割合:66.67%) 上限:なし

買付予定数の下限である18,303,000株は、発行済株式総数 27,763,880 株から、応募予定株式の合計 7,239,190 株及び、自己株式数から対象者の株式給付信託の所有する株式数を除いた309,400 株を控除した 20,215,290 株の過半数に相当する10,107,646 株(マジョリティ・オブ・マイノリティに相当)に、応募予定株式の7,239,190 株を加算した17,346,836 株を上回る。

第三者算定機関 プル―タスによる株式価値の算定
市場株価法: 298円~342円 (算出期間:11月4日までの1,3,6カ月)
DCF法   : 440円~723円 (算出期間:2021/3 ~ 2023/3)
割引率:4.85%~5.25% 残存価値の算定は永久成長率モデルを使用し永久成長率は0%を使用。

21年3月期において、イメージソリューション事業・グリーンエネルギー事業において大幅な増益を見込むものの、賃貸等不動産の売却益並びに現存損失の計上による大幅な減益が見込まれている。
また、22年3月期から23年3月期において、イメージソリューション事業・グリーンエネルギー事業・森林活性化事業において大幅な増益を見込む。

フェアネスオピニオン有り

株主構成は以下の通り

株主保有割合保有株数
藍澤證券12.423,448,760
JAPAN ASIA HOLDINGS9.452,624,800
日本マスタートラスト信託銀行(信託口)6.611,835,400
日本トラスティ・サービス信託銀行(信託口)2.78772,000
JA PARTNERS2.43673,600
佐藤哲雄2.1584,000
資産管理サービス信託銀行(信託E口)2.09580,800
ノムラ・シンガポールCセグリゲイテッドFJ13091.91530,050
DFA(Int`l)スモールキャップバリュー・ポートフォリオ1.88522,300
みずほ銀行1.78495,070
自社(自己株口)1.11309,100

外国人の保有比率が高めである点が特徴的。

応募合意株主は以下の通り

株主保有割合保有株数
藍澤證券12.423,448,760
JAPAN ASIA HOLDINGS9.452,624,800
JA PARTNERS2.43673,600
山下哲生氏1.79492,030
合計26.37%7,239,190

資産状況は以下の通り

資産合計額150,643百万円の内57.2%にあたる86104百万円が固定資産、42.8%にあたる64539百万円が流動資産となっている。流動資産の内訳は、現預金が半分程度、受取手形・売掛金が1/4程度、販売用不動産その他製品が残りを占める。固定資産の内訳は、機械等が半分程度となっている。

簡単に確認する限り換金性の高い資産はそれほど多くない為、600円という買付価格は1株当たり純資産額である862円に比べて低く思われるが、直近株価に対して70%のプレミアムがついている事も加味して考えると妥当なのではないだろうか。

PBRが低いTOBの過去の事例はこちらをご覧ください。

公表直前の値動き

9月中旬以降出来高が増加している事が伺える。また、この期間内に決算や好材料は発表されていなかったが大幅高となった日も散見され、デュー・ディリジェンスが開始された8月後半からおよそ15%上昇した。

2020/11/16 不自然な値動き

MBO公表から11月13日金曜日まで買付価格600円を軸として横ばいの値動きが続いたが、16日寄付き直後より買付価格を上回る値段での買付が進んだ。

短期線に沿った非常に強い動きであるとともに売りが出ていない事から、買い集めを意図した大口による取引である可能性が考えられる。

また、TOBに応募合意した大株主藍澤證券は、買付価格600円を5%(630円)以上上回る価格で第三者が対抗公開買付けを開始された場合、日本アジアGへの応募合意を解除して対抗公開買付けに応募することができる点も確認しておきたい。

大量保有報告書等が提出される可能性も考えられるため、今後の動向には注意したい。

2020/11/19 シティインデックス大量保有報告

11月19日引け後、旧村上ファンド系シティインデックスイレブンスにより大量保有報告書が提出された。

取得状況は以下の通り。

日付取得株数割合取引種別
11月10日401,5001.45市場内取得
11月11日940,2003.39市場内取得
11月12日240,4000.87市場内取得

今回提出された大量保有報告書では12日以降の売買動向は現時点では明らかにされていない為、14日以降に突如として生じた急騰はシティインデックスイレブンスによるものであるかは現時点では定かではない。

大量保有報告書と変更報告書が同時に提出されるケースも存在する中で、敢えて提出期限が到来した大量保有報告のみを出してきた事や、今回の急騰において短期移動平均線に沿った強い値動きを見せている事などから、14日以降の買いの主体もシティインデックスである可能性は十分に考えられる。

しかし、19日現在において14日以降の売買動向は不明であることや、PBRで考えた際の上値余地はそれほど存在しない事等様々なリスクが存在する為売買する際は細心の注意を払っていただきたい。

2020/11/20~ 変更報告書提出

11月20日引け後、シティインデックスイレブンスにより変更報告書が提出された。

内容は以下の通り
11月13日、市場内にて194,000株(0.70%)を取得
また、共同保有者の野村幸弘氏は178,100株(0.64%)を市場外で取得

11月20日現在における共同保有持ち分は2,066,600株(7.44%)


11月24日引け後、シティインデックスイレブンスにより変更報告書が提出された。

内容は以下の通り
11月16日、市場内にて134,600株(0.48%)を取得
また、共同保有者の野村幸弘氏は、取得単価623円で196,400株(0.71%)を市場外で取得

11月20日現在における共同保有持ち分は2,397,600株(8.64%)

今回の報告により、シティインデックスが買付価格600円を上回る価格で購入した事が明らかとなった。また報告期限の直前のもののみの提出が続いているため、可能な限り手の内は見せない様子。


11月25日引け後、シティインデックスイレブンスにより変更報告書が提出された。

内容は以下の通り
11月17日、市場内にて91,000株(0.33%)を取得
また、共同保有者の野村幸弘氏は、取得単価657円で207,600株(0.75%)を市場外で取得

11月25日現在において報告されている共同保有持ち分は2,696,200株(9.71%)


11月26日引け後、シティインデックスイレブンスにより変更報告書が提出された。

内容は以下の通り
11月18日、市場内にて70,800株(0.26%)を取得
また、共同保有者の野村幸弘氏は、取得単価691円で205,700株(0.75%)を市場外で取得

11月26日現在において報告されている共同保有持ち分は2,972,700株(10.71%)


11月27日引け後、シティインデックスイレブンスにより変更報告書が提出された。

内容は以下の通り
11月19日、市場内にて173,900株(0.63%)を取得
また、共同保有者の野村幸弘氏は、取得単価769円で357,200株(1.29%)を市場外で取得

11月27日現在において報告されている共同保有持ち分は3,503,800株(12.62%)

シティインデックスが市場内で大規模な買付を行っていた事が明らかとなった。連日出来高の3割程度を取得しているため、23日~27日にかけて、更に85万株程度買付を行った可能性も考えられる。

シティインデックスによる公開買付けの開始予定のお知らせ

2021年1月14日引け後、旧村上系レノのホームページ上に、日本アジアグループ株式会社(証券コード:3751)の株券等に対する 公開買付けの開始予定に関するお知らせが公開された。

主な内容は、買付価格の引上げ(1株当たり600円 → 840円)
及びその経緯について。

ただし、公開買付の開始予定であり、一定の前提条件が充足された場合に開始するとのこと。

・前提条件
①関東財務局により本公開買付けに係る公開買付届出書が受理されること。
②外為法に基づく対内直接投資に対する規制に基づく事前届出により本公開買付けによる対象者株式の取得が可能となったこと。
但し、その前に本公開買付けを開始し、同規制によって予定通りの取得ができない見込みとなったときに本公開買付けを撤回することとすることも考えられる
③法第 27 条の 11 第1項但書に定める公開買付けの撤回が認められる事由又はこれに準じる事由が生じておらず、かつ、生じる蓋然性が高くないこと
④MBO 公開買付けが成立していないこと(MBO 公開買付けが継続している状態にあることを含む)

・対抗TOBに至った経緯(要旨)

シティは、山下氏が本件MBOにより、わずか6000万円の出資で100億円以上の純資産を保有する日本アジアの株式全部を保有することになるのではないかと考え、本件 MBO は、本来であれば得られるはずの日本アジア株主の利益の犠牲のもとに山下氏が不当に過大な利益を得ようとするスキームではないかと危惧し、日本アジア取締役会に対して「山下氏が全株式を取得することとなる日本アジアの純資産額は何億円程度になるのか」との質問を繰り返し行ったが、その件については返答が無かったため、カーライルとの協議を開始した。

シティは、
・上記の不公正が解消されれば公開買付に応募してもよい旨
また、非公開化するとしても
・一定割合以上を保有する大株主が日本アジアの株主として残ることができるようにする事
・残らない株主のためにMBO公開買付けの公開買付価格を引き上げも検討

について伝えた所、カーライルは
・対象子会社対価である 370 億円については公正な価格
・MBO 公開買付けの公開買付価格の変更は困難
・山下氏がわずかな出資で取得することとなる日本アジアの純資産額を減少させる形のMBO公開買付けの公開買付価格の変更について山下氏と協議する旨
の返答があった。

上記の説明後、公正なスキームへの変更を山下氏にお願いしたところ、山下氏は変更に応じてもよい旨及び買付価格の引上げには反対した。また、カーライルもスキーム変更には応じられないと回答したため交渉は打ち切りとなり対抗TOBに至った。


ひとりごと

なぜシティインデックスはデューデリジェンスを行わなかったのかについて疑問。
シティは適切な買付価格をいくらだと考えているのか。(内部では確実にしているだろうが意図的に出していないのだろう。)
もしカーライルがシティの条件を呑んだ場合、シティは公開買付に応募したと考えられ、そのようになった場合600円で買付が成立し、非公開後も株主として残り、本来であれば得られたはずの日本アジア株主の利益の犠牲のもとに利益を享受する側に回っていたかもしれない。
その辺がなんだかなぁって…

また、山下氏が何としてもMBOを成立させたいのならば更に買付価格を引上げると考えられる。
そうなれば、シティは更に利益が出せるし、更に有利な条件での交渉が可能となるかもしれない。

シティインデックスの狙い

今回のシティインデックスの狙いを推測してみた。※推測です!

そもそも日本アジアグループは、林業活性化・空間情報・グリーンエネルギー(発電事業)の3事業を生業としている。
利益構造を確認すると、その大半をグリーンエネルギー(太陽光等の発電)事業が稼ぎ出しており、20年3月期においては利益率は20%を超えている。

気になる太陽光発電事業についてだが、日本アジアグループのホームページにこの様な記載が有った。

2020年3月現在、太陽光発電所約241MWを開発し、運営・管理を行っています。この太陽光発電の実績に加え、バイオマス・風力・地熱・小水力発電の開発も進めています。

https://www.japanasiagroup.jp/service/03.html

太陽光発電所の発電力約241MWというのはどの程度の規模かというと、最近、再生可能エネルギー銘柄として注目されている9519 レノバの場合で現在運転中の発電力が約330MWである。

19日時点でのレノバの時価総額は1,760億円と日本アジアグループの約8倍となっている。
レノバは現在建設中、開発中の発電所を含め1.8GWの発電力を将来的に見込んでいるため、時価総額が膨らむのは当然である。

しかし、稼働中の発電力で考えると、日本アジアグループはレノバの7割程度の発電力を保有しているにもかかわらず、時価総額はおよそ8倍もの開きが存在し、過小評価されている事は明白だ。
その為今回のTOBでは、多少上乗せしてでも発電事業を取得したいという思惑がシティインデックスにはあるのではないかと考えた。

もちろん、単に買い付け価格の引き上げを目論んでいる可能性もある。

ひとりごと

TOBが発表される直前に上昇する銘柄が多いのは偶然なのだろうか。
先日、ドンキHDの当時の社長が知人に自社株の購入を不正に推奨していた疑いが有ることが報じられたことも有り、今回も?と疑ってしまう。

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