はじめに
8月13日の引け後、ZOZO創業者の前澤友作氏から〈2685 アダストリア〉,〈7606 Uアローズ〉の2社に対しての大量保有報告書が提出された。アパレル業界はコロナによる影響を大きく受けており厳しい状況を強いられているため、株価も冴えない中、同氏による大量保有報告書の提出は、各所で大きく取り上げられた。
そこで今回は、大量保有報告書や株価、空売り残高から分かる事や、今後の戦略についてを記事にした。
大量保有報告書の概要
アダストリアに提出された大量保有報告書はコチラ
保有目的：❝純投資を基本とするが、発行者経営陣との間で友好的な関係が構築されることを前提として、必要に応じて企業価値向上のための助言又は提案を経営陣に対して行う可能性もある。❞
取得株式数：2,735,100株（5.60％）
取得資金 ：3,973,902,000円（自己資金）
直近60日以内の売買動向
| 日付 | 出来高 | 取得株数 | 取得比率 | |
| 令和2年7月13日 | 565,900 | 189,200 | 0.39 | 市場内取得 |
| 令和2年7月14日 | 300,700 | 15,100 | 0.03 | 市場内取得 |
| 令和2年7月20日 | 541,700 | 170,100 | 0.35 | 市場内取得 |
| 令和2年7月21日 | 431,200 | 178,900 | 0.37 | 市場内取得 |
| 令和2年7月22日 | 269,600 | 60,100 | 0.12 | 市場内取得 |
| 令和2年7月27日 | 622,200 | 243,400 | 0.5 | 市場内取得 |
| 令和2年7月28日 | 483,300 | 229,800 | 0.47 | 市場内取得 |
| 令和2年7月29日 | 593,700 | 300,000 | 0.61 | 市場内取得 |
| 令和2年7月30日 | 644,100 | 300,000 | 0.61 | 市場内取得 |
| 令和2年7月31日 | 586,500 | 300,000 | 0.61 | 市場内取得 |
| 令和2年8月3日 | 386,400 | 79,300 | 0.16 | 市場内取得 |
| 令和2年8月4日 | 274,600 | 47,600 | 0.1 | 市場内取得 |
| 令和2年8月5日 | 321,200 | 7,200 | 0.01 | 市場内取得 |
| 令和2年8月6日 | 802,100 | 300,000 | 0.61 | 市場内取得 |
Uアローズに提出された大量保有報告書はコチラ
保有目的は上記のものと同じ。
取得株式数：2,407,000株（7.97％）
取得資金：3,528,648,000円（自己資金）
直近60日以内の売買動向
| 令和2年7月13日 | 791,200 | 300,000 | 0.99 | 市場内取得 |
| 令和2年7月14日 | 391,500 | 39,600 | 0.13 | 市場内取得 |
| 令和2年7月20日 | 539,900 | 111,800 | 0.37 | 市場内取得 |
| 令和2年7月21日 | 295,300 | 4,700 | 0.02 | 市場内取得 |
| 令和2年7月27日 | 414,400 | 58,200 | 0.19 | 市場内取得 |
| 令和2年7月28日 | 412,600 | 120,900 | 0.4 | 市場内取得 |
| 令和2年7月29日 | 236,700 | 26,000 | 0.09 | 市場内取得 |
| 令和2年8月6日 | 1,974,700 | 300,000 | 0.99 | 市場内取得 |
| 令和2年8月7日 | 1,045,700 | 600,000 | 1.99 | 市場内取得 |
ユナイテッドアローズの広報担当者が「お世話になったので純投資をしたい」と前澤氏から連絡があったとの明かしていることからも、文面通りの意味合いであると考えられるので、保有比率が上昇する事は有っても、TOBなどが行われる可能性はほぼ考えられない。
直近60日の売買動向からは、1日の取引高の半分以上を占めることがある他、アダストリアの場合は1日当たり最大300,000株、Uアローズの場合は600,000株取得している事がわかる。
アダストリア、Uアローズの直近の株価
厳密には7/13以前に買い付けを開始しているが、直近60日以内では7/13以降で買付を行っているため、それ以降の値動きを確認する。初日は、+5.7%の大幅高で引け、16日の決算で厳しい数字が出たために翌日17日は窓を開けた下落で始まった。17日以降8月7日までは1500円より上は重い展開が続いたものの、1400円以下を付けたのは8月6日の午前中のみであった。終値では1450を超えており、底は固い印象を受けた。
7月13日に買い付けを開始して以降、30日、31日に大きめの下落があった。これは市場全体の下落に伴うものであった。8月5日の決算日を前に、期待買いが入ったが決算後は下落。しかし、1300円以下はほぼ付けていない。現時点では8月7日までの報告書以外には提出されていないため断言はできないが、7日以降も前澤氏による買い支えがあったものと思われる。
2社の株価の共通点としては、下ヒゲを付ける日が多く有る点が上げられる。また前澤氏は決算日の数日前からは買付を行っておらず、安値を拾っていく堅実さや業界に対する深い理解が伺える。
機関投資家による空売り
| 計算日 | 空売り者 | 残高割合 | 増減率 | 残高数量 | 増減量 | 備考 |
| 2020/8/13 | モルガン・スタンレーMUFG | 0.00% | -1.20% | 0株 | -586,335 | ポジション解消 |
| 2020/8/12 | モルガン・スタンレーMUFG | 1.20% | 0.07% | 586,335株 | 34,300 | |
| 2020/8/11 | モルガン・スタンレーMUFG | 1.13% | 0.13% | 552,035株 | 63,900 | |
| 2020/8/7 | モルガン・スタンレーMUFG | 1.00% | 0.19% | 488,135株 | 92,100 | |
| 2020/8/6 | J.P. Morgan Securities | 0.00% | -0.66% | 961株 | -325,800 | ポジション解消 |
| 2020/8/5 | モルガン・スタンレーMUFG | 0.81% | 0.10% | 396,035株 | 45,700 | |
| 2020/8/3 | モルガン・スタンレーMUFG | 0.71% | 0.09% | 350,335株 | 43,800 | |
| 2020/7/31 | モルガン・スタンレーMUFG | 0.62% | 0.12% | 306,535株 | 58,934 | |
| 2020/7/21 | モルガン・スタンレーMUFG | 0.50% | 0% | 247,601株 | 再IN（前回2020-07-03） | |
| 2020/7/20 | J.P. Morgan Securities | 0.66% | -0.13% | 326,761株 | -61,799 | |
| 2020/7/3 | モルガン・スタンレーMUFG | 0.41% | -0.17% | 200,501株 | -83,100 | 報告義務消失 |
機関投資家による空売り状況は上記の通り。気になる点は、なぜ大量保有報告書が提出される直前にモルガンスタンレーが損失覚悟でポジション解消を行ったのかについてである。
| 計算日 | 空売り者 | 残高割合 | 増減率 | 残高数量 | 増減量 | 備考 |
| 2020/8/12 | Credit Suisse AG | 0.69% | -0.15% | 209,729株 | -44,400 | |
| 2020/8/12 | Integrated Core Strategies | 1.14% | -0.09% | 345,301株 | -27,200 | |
| 2020/8/11 | Credit Suisse AG | 0.84% | 0.05% | 254,129株 | 13,700 | |
| 2020/8/7 | Credit Suisse AG | 0.79% | 0.25% | 240,429株 | 74,500 | |
| 2020/8/6 | Credit Suisse AG | 0.54% | 0% | 165,929株 | 再IN（前回2020-06-16） | |
| 2020/7/29 | Integrated Core Strategies | 1.23% | -0.07% | 372,501株 | -21,900 | |
| 2020/7/27 | Integrated Core Strategies | 1.30% | 0.01% | 394,401株 | 1,900 | |
| 2020/7/22 | Integrated Core Strategies | 1.29% | -0.03% | 392,501株 | -9,000 | |
| 2020/7/16 | Integrated Core Strategies | 1.32% | 0.09% | 401,501株 | 28,600 |
ユナイテッドアローズに対する空売りは上記の通り。8月12日には2社買い戻しを行われている。13日のアダストリアの傾向を踏まえると、14日には更に買い戻しを行っている可能性が高いと思われる。
今後の戦略
アダストリア、Uアローズに対する買付は今後も行われる可能性は有るとは思うが、14日には両者ともに大幅高となったためリスクが高いように思われる。前澤氏は今回の買付に関して、アパレル業界に対する恩返しであると発言しているため、ZOZOが扱っている他のブランドを保有する企業に投資妙味が有りそうである。
以下にZOZOで取り扱いのあるブランドと、それを保有する企業をまとめた。括弧内の数字は取り扱いアイテム数なので、この数字が大きいほどzozoを通して売れる確率は高くなると思われる。ただ、取り扱いアイテムが多いからと言って売れるかどうかはまた別問題なので、実際に売っている商品を見てセンスが良いかの見極めも大切だ。
〈2726パルＨＤ〉
ZOZO取り扱いブランド：IAUCCI(147) , ciaopanic(975) , russet(326) , COLLAGE GALLARDAGALANTE(499) , un dix cors(655) , OLIVE des OLIVE(369) , RASVOA(289) , COLONY 2139(2866) , Delyle NOIR(336) , NICE CLAUP(15) , natural couture(886) , pual ce cin(435) , BARAK(304) , RIVE DROITE(356) , BIRTHDAY BAR(10) , WHO’S WHO gallery(238) , prose verse(312) , PAPILLONNER(168) , Omekashi(398) , CUISINE HABITS(11) ,
〈2792ハニーズＨＤ〉
GLACIER(17) , CINEMA CLUB(30) , COLZA(8)
〈3189ＡＮＡＰ〉
ANAP(1031) , CHILLE(1092) , LATINA(403) , Settimissimo(892) , Alluge(6) , Factor=(1056) , AULI(1007)
〈3415ＴＯＫＹＯ ＢＡＳＥ〉
UNITED TOKYO(1776) , PUBLIC TOKYO(1775)
〈3548バロック〉
AZUL BY MOUSSY(3295) , BLACK BY MOUSSY(408) , MOUSSY(2226) , SLY(1925) , Rodeo Crowns(485) , AVAN LILY(710) , STACCATO(304) , LAGUA GEM(701)
まだまだカジュアルファッションブランドは沢山あるので、自分だけの銘柄を探してみてもいいかも！？
